自律性を備え、結果から学習し、仮説を検証する“スマートマシン”が耳目を集めている。マシンといっても、その能力はもはや人間の代替物さながらだ。
現在すでに登場しているスマートマシンもいくつかある。たとえばAmazonが2012年に買収したKiva Systemsは物流センター向け自律運搬ロボット、つまりスマートマシンのメーカーだった。IBMのスマートマシンである質疑応答システム「ワトソン」は、米国の人気クイズ番組で勝利し、賞金100万ドルを手にした。自然言語を理解して解答するのは、単純な機械にはできないことだ。
スマートマシンを導入することの最大のメリットはルーティンワークをなくすことにある。さらに「非ルーティンワークの一部も置き換えられていくだろう」とガートナージャパンの池田武史氏は言う。「スマートマシンは自ら仮説を立て、大量のデータを処理・検証しながら仕事を進めていくことができる。企画やマーケティング、ファイナンスといった職種もスマートマシンに置き換わる対象になるだろう」(池田氏)。一方、スマートマシンを個人で購入して利用し、自分の本業に役立てるという人も出てきそうだ。
これが普及した場合、影響は制度面の整備、セキュリティや安全性の確保、失業問題、さらに働く人間の心理にまで及びそうだ。「多くの作業がスマートマシンに置き換わると、『人はなんのために生きていくのか』というところにいきつき、心理的に拒絶する可能性がある。産業革命の頃の人々と同じかもしれない」(池田氏)。
(ライヴ・アート=図版作成)