今までのグローバル資本主義は、個々の動き(部品)が合理的な動きをして全体を形成する「機械論」だった。しかし現行のシステムは限界にきている。むしろ投資やマーケットは、人生や人間に似た矛盾だらけの生き物で、「生命論」として捉えるべきなのだ。この考え方は、ファンド資本主義に違和感を覚えていた私が、理想とする投信会社を立ち上げるきっかけとなった。

その際、大きな影響を受けたのが、『生命の暗号』と『八つの日本の美意識』。前者は、いい環境に身を置くことが眠っているDNAのスイッチをオンにするという説を展開する。後者は建築家でプロダクトデザイナーの著者が「矛盾の中にこそ、次の創造性のヒントがもっとも含まれている」と語った本だ。田坂広志さんの著作にも共鳴する部分が多い。『目に見えない資本主義』の「数値化だけが全てではなく、見えない価値を重視する社会が到来する」という主張は、生命論にも通じる。

(構成=鈴木 工 撮影=的野弘路、永井 浩)