法律はさまざまな事態を想定し、世の中を良くしようとしてつくられてきた。つまりすべての法律にはマインド(心)がある。概して、日本のビジネスマンは知識を詰めこむ作業は得意だが、未知のものに対して、自分自身で解答を見つけ出す作業は不得意だ。今やノウハウ本を探して、“その場しのぎの対症療法”ですむ時代ではない。しかるべき本を読み、事象のマインドをつかむ。そうすることで、実生活のあらゆる場面での応用も利くだろう。『アメリカ民事手続法』は、アメリカの陪審制の成り立ちについて詳しく書いてある一冊。かつて英国の植民地だったアメリカの裁判で、裁判官と検察官は英国から派遣された官僚が担当していた。そうした歴史から、官僚の判決には抵抗感を感じるが、隣人の裁きには100%従うというアメリカ人のマインドが生まれている。陪審制の誕生は、アメリカ人が民主主義を獲得してきたプロセスそのものと言ってよい。
CSR(企業の社会的責任)が問われるようになった経緯を解説するのが、『SRI社会的責任投資入門』。1970年代に学生運動に従事した者たちが定年を迎え、参加したカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)で「社会悪的行為をする企業は投資対象からはずせ」と言い出した。このようなCSRの根底にある歴史を、経営者は知っておく必要がある。その思想をつかめば、雇用の確保が社会的責任に入る理由も自ずとわかってくるはずだ。
1 アメリカ民事手続法/浅香吉幹
2 SRI社会的責任投資入門/谷本寛治編
3 失敗の本質/野中郁次郎他
4 日本の刑罰は重いか軽いか/王雲海
5 株式会社法(第2版)/江頭憲治郎
6 会社法入門/神田秀樹
7 金融商品取引法入門(第3版)/黒沼悦郎
8 金融商品取引法読本/河本一郎、大武泰南
9 知的財産権の知識/寒河江孝允
10 労働法(第八版)/菅野和夫