『複雑性とパラドックス』『生物と無生物のあいだ』は、科学技術全般を理解するうえで知見を与えてくれる。
前者は、生物、経済、コンピュータなどといったあらゆる複雑さの中にさまざまな本質があることを、後者は生命というシステムが動的に平衡を保つことを説く。両書に通じる「世の中の原理を捉える」発想は、環境問題、医療問題など、地球規模の社会的問題をITで解決する弊社の「スマーター・プラネット」構想にも通じるものがある。
1972年に発表された『成長の限界』は、人類が環境問題に対してどのような将来像を持つべきかを、科学者の観点で数学的にモデル分析し、複数のシナリオを提示した。地球全体の将来を冷静な視点で捉え、国際的な議論の土台とした功績は大きい。
感銘を受けたのは、日本が世界に誇る科学者である金出武雄さんの『素人のように考え、玄人として実行する』。仕事の内容がいくらプロフェッショナルでも、その内容が素人に対して説明できなければ意味がない。研究者のあり方を問う内容だ。
個人的な趣味として、よく読むのはSF小説。SFは空想の世界だが「自分の思考の枠を超える」チャレンジを促してくれる。イマジネーションを刺激するという意味では、将来、人間の意識がコンピュータにアップロードされると主張する『ポスト・ヒューマン誕生』のような極端な話も、大変面白い。
1 複雑性とパラドックス/ジョン・L・ キャスティ
2 生物と無生物のあいだ/福岡伸一
3 成長の限界/ドネラ・H・メドウズ
4 素人のように考え、玄人として実行する/金出武雄
5 ポスト・ヒューマン誕生/レイ・カーツワイル
6 遠き神々の炎/ヴァーナー・ヴィンジ
7 ITにお金を使うのは、もうおやめなさい/ニコラス・G・カー
8 フラット化する世界(上)(下)/トーマス・フリードマン
9 プランB/レスター・ブラウン
10 巨象も踊る/ルイス・ガースナー