『ベスト&ブライテスト』は、アメリカ中の英才を集めたケネディ政権が愚劣なベトナム戦争に突入していった過程を検証している。一時期の民主党のように、頭のいい人材だけが集まってもうまく事が運ぶとは限らない。組織というものは、さまざまな能力を持った人間がバランスよく配置されたときにこそ、うまく機能することがわかる。
今の政治状況で、大きなテーマになっているのが「小泉政治とは何だったのか?」という総括である。その小泉氏を地を這うような取材で、鮮明に浮かび上がらせたのが、『小泉政権 非情の歳月』。自民党が弱体化した理由を考えるのには、自民党づくりに奔走した三木武吉の生涯を描く『誠心誠意、嘘をつく』も面白い。こうした軍師タイプの政治家が、最近はいなくなってしまった。
昔の政治家に学ぶ本として、後藤田正晴の信条が詰まった『政治とは何か』も勧めたい。第二次大戦を深く反省し、過ちを繰り返さないために日本はどうあるべきかを考えぬいた希有なハト派政治家だった。同様に日本の政治家に読ませたいのが、英国人の視点からフランス革命を論じた『フランス革命についての省察』である。近頃「保守」「革新」を浅薄な意味で使う政治家が多い。保守主義とは何かを理解するのに必読だ。
今回選んだ本は過去の政治を見直す本が中心になった。しかし大事なのは、過去に何が起きたのかを踏まえておくこと。その先は個人個人が判断をくだせばいいのである。
1 ベスト&ブライテスト/D・ハルバースタム
2 小泉政権 非情の歳月/佐野眞一
3 誠心誠意、嘘をつく/水木 楊
4 政治とは何か/後藤田正晴
5 フランス革命についての省察(上)(下)/エドマンド・バーク
6 日本政治「失敗」の研究/坂野潤治
7 戦後政治史新版/石川真澄
8 永田町 政治の興亡/ジェラルド・カーティス
9 国家の品格/藤原正彦
10 政治の教室/橋爪大三郎