58歳にもなると、よくも悪くも自分ができあがり、自身を変えるような本に出会うことが少なくなった。限られた時間の有効活用として考えれば、昔感銘を受けた本をもう一度読み返すほうがいい。何度も読み返し、付箋を貼り、線を引き、ボロボロになったら買い換える。“学ぶ”とは“真似ぶ”に通じるという。私淑する人物の文章が、自分の言葉になるぐらいに読み込んでみるのもいい。そうやって本は自分の血となり、消化されていくのだ。

私が若い頃、気がつくと言葉を真似していたのが、安岡正篤先生の本だった。氏の本は『いかに生くべきか』などの四部作を中心に、東西を問わずあらゆる古典をわかりやすく解説しており、どれもはずれがない。森信三さんの『修身教授録』も優れた内容だし、日本の経営者にもっとも受け入れられたドラッカーの名言集『仕事の哲学』も、何度も読み返したくなる一冊である。

(構成=鈴木 工 撮影=的野弘路、永井 浩)