夏以降、株式市場が荒れている。長期投資家の渋澤健さんは「インデックスファンドを買っている人の多くが、『価格(株価)』だけを見て、個々の企業の『価値』を見ていない。価値を見極めて購入していれば、一時的な値動きに影響されず冷静な判断ができるはずだ」という――。

投資は世の中の成長を身につけること

投資を英語にすると、「インベスト(INVEST)」。

「ベスト(VEST)」に「入れる(IN)」という意味です。

つまり、世の中の成長を身につける。

いわば、「日常生活圏外から、いろんな視点や成長を呼びこむことができる引換券を自分のベストのポケットに入れる」というような意味合いですが、投資初心者にとっては、個別銘柄の投資先については未知の領域であるのが問題です。

だから「全体」や「平均」を買うインデックスファンドを買う。これは非常に合理的なことですが、盲点があることを前回述べました。インデックスファンドを買っている人の多くが、「価格(株価)」だけを見て、個々の企業の「価値」を見ていない、あるいは気にしていないということです。

本来、株式市場というのは、個々の会社の価値創造が反映される場ですから、投資する会社それぞれにあるストーリーや価値を見極めていくことは思いのほか重要です。

投資も立派な“推し”である

たとえば私たちには、好みがあります。いろいろなドラマや映画を見て、この役者がいい、ストーリーがいい、監督が好きなど違いを見つけて、こちらから好きになっていく。

ですが株式投資となると、YouTubeの○○チャンネルを見ただけで満足している。極端な話になると、誰かのチャンネル一択で投資先を決めてしまう。

でも、ちょっと待ってください。

株式投資にも好みがあっていいのです。

個々の会社のストーリーを重視し、自分の好みに合った企業の価値を見つけられると、俄然別の側面が見えてきます。「この会社の価値と個性が好きだから、私はこの株を買うのだ」と。

JPX東京証券取引所
写真=iStock.com/VTT Studio
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そう、投資も立派な“推し”なのです。

ですからたとえ相場がくずれても、そのときはより低い値でその“推しの価値”をより多く購入できる機会になります。

上がっても、下がっても、自分の好みに根差していれば健康的な現状把握ができるのです。数字の上下だけを見ていたら、投資の豊かさにはいつになっても気づけません。