競合の脅威を先取りしてしまう

1999年の「世直し劇」では坂本龍馬に扮した。(写真=ロイター/AFLO)

孫さんの考え方はシンプルでわかりやすい。「事業は大技、中技、小技から形成される。経営者は大技だけ常に考えろ」とも言われました。僕は「その大技のためには、どこから情報を仕入れているんですか」と聞きました。すると「おれはひたすら自分で考えている」と言う。「どうやって考えるんですか」と聞くと、答えはこうでした。

「自分の事業のなかで、一番うまくいっている事業を取り上げて、それがもし競合に潰されるとしたら、どんな状況か。どんなビジネスモデルが脅威なのか。それが思い描けたら、先取りして、自分でやってしまう」

ソフトバンクの経営会議では、こういったやりとりを、根回しなし、ぶっつけ本番でやっています。「動物園のようだ」と評した人がいますが、まさにその通り。常に真剣勝負で、孫さんも、役員も、大声を張り上げる。孫さんが掲げる「情報革命で人々を幸せにする」という理想のために、いい年の大人が泣いたり、笑ったりする。そんな独特の雰囲気があります。

内藤誼人が分析 心理学的なツボ

【水路付け】思考はある一点に集中させないと分散してしまう。厳格な「水路付け」をしないと水は一つの方向に流れないのだ。寝ても覚めても常にビジネスのことを考え、それを習慣化することが、成功への近道となる。

ヤフー副社長 川邊健太郎
1974年生まれ。96年「電脳隊」を設立。同社は2000年にヤフーと合併。Yahoo!ニュースプロデューサー、GyaO社長などを経て、12年副社長COO。14年6月より取締役を兼任。
 
(溝上憲文=構成 遠藤素子=撮影 ロイター/AFLO=写真)
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