会社を動かすのは誰か。それはあくまでも、現場の社員だろう。では、社員を動かすのは、どんな経営者だろうか。創業者、大株主、カリスマ。そんなものは空疎なレッテルにすぎない。孫正義氏の何が周囲を心酔させるのか。ソフトバンク幹部たちが初めて明かした──。
――ソフトバンクモバイル取締役専務 榛葉淳氏の場合

自信満々に語った「豆腐屋の心意気」

2001年にはADSLを使う格安電話事業にも進出した。(時事通信フォト=写真)

1985年に新卒3期生として入社しました。当時の社員数は100人程度。その新人研修で孫社長が「ソフトバンクは将来、豆腐屋が『1丁、2丁』と数えるように、『1兆、2兆』というビジネスをやる会社になる」と話したことを、いまでも鮮烈に覚えています。孫社長は「根拠のない自信」と言いますが、明日どうなるかわからない中小企業だったにもかかわらず、あまりに堂々と話すので、「この人は、本当にやるかもしれない」と思いました。

それから約30年。孫社長の人となりは変わっていないと思います。言葉は悪いですが「親父」という感じ。言いたいことは言わせてもらう。向こうもすごい勢いでくるけど、やさしさを感じる。孫社長は経営者として加速度的に進化していきましたから、それに追いつくために自分も成長しなくてはいけない。孫社長はよく、「座して何もしなければ、汗をかくことも、失敗もしないですむが、それは一番の悪だ。とにかく動いてみろ。失敗はOKだ」と言います。だから失敗を恐れない、自由闊達な風土が養われたのだと思います。