政府が掲げる「介護離職ゼロ」は笑止千万
介護のために仕事を辞める介護離職者は年間10万人を超えるそうです。
介護離職者が多いのは40代、50代。この年齢になると再就職先もなかなか見つかりません。また、離職される企業側にとってもキャリアを積んだ働き盛りを失うのは大きな損失です。
そんな状況を受けて安倍首相はこの9月、「介護離職ゼロ」の目標を掲げ、そのための施策を明示しました。(1)不足している特別養護老人ホームなど介護施設の増設、(2)介護人材の確保、(3)介護家族の柔軟な働き方の確保、(4)家族に対する相談・支援の充実が施策の4本柱です。
この施策に対して介護関係者の一部から「これでは介護離職ゼロにはならない」といった疑問の声があがりました。その意見で共通するのは次のような点です。
<介護業界の最大の課題は人手不足。過酷な労働にもかかわらず低待遇なのが原因だ。施策でも人材の確保をあげているが、それは介護職を目指す学生の増加を促す支援などで、肝心要の待遇改善には触れていない。これでは人材は確保できず、介護施設を増設しても職員の負担ばかりが増えケアの質も下がる。家族もこういう所に親を入れる気にはならず、自分でケアしようと思うだろう>
結果、この施策では介護離職はゼロにはできないというわけです。
介護現場で多くの要介護者とその家族に接している立場の人は、この施策と疑問の声をどう受け止めているのでしょうか。実父の介護をした時にお世話になったケアマネージャーのFさんに聞くと、こんな答えが返ってきました。
「政府が介護離職をゼロにするという目標を立てて動き出したのは良いことですし素直に評価すべきです。ただ、私もこの施策では介護離職者を減らせないと思います。施設や人材が不足していることや待遇面の問題はすべてつながっているわけですが、もっと身近な部分にも介護離職者が生まれる原因があります」