介護している人は、なぜ会社で肩身が狭いのか?

Fさんはまず、現在行われている介護サービスが仕事を持つ人の事情に即していないことを指摘します。

「離職を考えざるを得なくなるのは仕事に影響が出るからです。なかには自ら介護と仕事の両立は無理と判断して辞める方もいるでしょうが、介護のために会社や同僚に迷惑をかけてしまう、あるいは会社から冷遇されるといったことがあって離職を決断される方が多い」

最初から自主的に会社を辞める人もいれば、途中で辞める人もいるということだが、「両立」を断念せざるを得ない具体的な理由は何だろうか。

「仕事を持っている方が介護をするうえで頼りにするのが通所介護、デイサービスです。通常、デイサービスは朝9時頃、お迎えが来る。どの会社も始業時間は大体9時ですよね。見送ってから行くとなると、出社がかなり遅れるわけです。また、デイサービスは5~7時間、長いところでは7~9時間です。サービスが9時から始まったとして、長い9時間でも終わるのは18時。これに間に合うように帰るには、終業時間も早くさせてもらう必要があります。会社にいる間、懸命に働いたとしても、こんな日々を続けていたら肩身も狭くなりますよ」

厚労省では施策のひとつ、介護家族の柔軟な働き方の確保として介護休業制度の見直しをあげています。

介護休業制度とは、介護が必要になった社員に最長93日までのまとまった休みをとることを企業に義務づける制度です。ただし、とれる休みは介護期間中1回だけ。これを分割してとれるよう見直しを進めています。

また、これと併せて、(1)1日単位で休める介護休暇の延長や、(2)半日単位で休みがとれる、(3)介護を終えるまで残業免除を義務づける、といったことも検討しています。

「厚労省がこうしたことを検討するようになったのは大きな前進です。でも介護休業制度にしても日数が限定されている。介護はいつ終わるか分からないものであって、こういう制度があっても活用しにくいのが現実。結局、会社に居づらくなって辞めざるを得なくなるのです」