「両立」すると、介護職員と老親は泣く
こんな状況にあっても、Fさんが担当する介護者の家族には自分なりの工夫で離職せずに介護を続けている人がいるそうです。
「会社の理解を得て出勤が遅れることを認めてもらったうえで、デイサービスを延長してくれる施設を利用しているんです。延長したサービスが終わるのが19時半。これなら出社時間が遅れた分も含めて、終業時間ちょっと過ぎまで目一杯働けますから、周囲からの軋轢も軽減できるわけです。実際、デイサービスは12時間まで介護報酬が認められており、時間延長をする事業所もあるので、そういうところを探すのもひとつの方法でしょう」
この事例を見ていると、介護離職を少なくするには朝早くから夜遅くまでデイサービスをする施設を増やすことだと思えてきます。
ただし、これはあくまで仕事を持つ介護者目線の発想であって、実際は多くの問題をはらんでいるとFさんは言います。デイサービスの時間を延ばせば介護職員の負担を増やしてしまうことになりますし、それ以前にサービスを受ける要介護者本人の精神的負担が大きくなるそうです。
「安心して過ごせる自宅とは異なり、慣れない施設で過ごす時間は長いものに感じます。短い5~7時間のデイサービスでもつらいのに、12時間もいたら精神的ストレスは相当なものになるのです」
離職をせずに介護を続けようとする介護者の立場に立つか、それとも要介護者の立場に立つかによって是非が大きく異なってしまうのが介護の難しさでしょう。
同様のことは「お泊りデイサービス」にもいえます。
お泊りデイサービスとは、デイサービスを行なう事業所が、そのまま施設で利用者を宿泊させるサービスです。介護者は仕事の関係で出張することもあります。また、介護に疲れ切った介護者が、介護から解放されて一夜を過ごしたいと思うこともある。そうした緊急避難的なニーズに対応するサービスといえます。料金も1泊1000円台から3000円と手頃です。