立って仕事もOK! 北欧式オフィス空間

イベントや制度ではなく、目に見える設備で社員の居心地と使い勝手を改善し、社内コミュニケーションの活性化を図っている会社もある。その1つが、スウェーデンに本社を持ち、携帯電話の通信技術とサービス提供の分野で世界最大手であるエリクソンだ。

港区にあるエリクソン・ジャパンの東京本社を訪れると、いたるところに観葉植物が置かれ、色鮮やかな北欧調のインテリアに囲まれたオフィス空間に圧倒された。

「カーテンの色にもこだわっています。各自の作業をするオフィスには目に優しいグリーン系、議論をするオープンスペースには赤っぽい色を配しました。北欧は原色を使わないのが特徴です」

【エリクソン・ジャパン】上:ビジネスラウンジは議論が活発化する赤系。下:スウェーデンでは一般的という電動上下昇降式デスクを導入。執務エリアのカーテンは目に優しい緑系。

取締役の小笠原修氏は、11年にこの場所に移転するまでは「席も会議室もごく普通の(日本的な)オフィスだった」と明かす。移転する際に、どのようなコンセプトのオフィスにするかを社内で議論。結果として、世界各国のエリクソンが採用する本社式の導入を決めた。

新オフィスでは、変化の早いモバイル市場で専門知識のある社員がイノベーションを起こしやすくするため、移動可能性・効率性・自由度の3つに焦点を当てている。

例えば、出張の多い社員がどこでもすぐに快適に働くためには、固定した座席や予約が必要な会議室ばかりでは障害になりかねない。「毎朝早い者勝ち」で座席を自由に選べるフリーアドレス制を導入。グループなら予約なしで使える「クワイエットルーム」やカジュアルな打ち合わせや食事ができる「ミーティングハブ」などを設置。快適な環境でいつでも話し合いができるようになった。一方では、長時間の電話で周囲に迷惑をかけないようにするための「テレフォンブース」があり、机はすべて電動昇降式で、ボタン1つで上げ下げが可能。立ってデスク作業をすることもできる。

「社員一人一人、体格も働き方も違いますから、同じ高さの机で座って仕事をさせなくてもいいという考え方がスウェーデンにはあります。昼食後などはしばらく立って働いたほうが楽な場合もありますし、実際に試してみると、仕事にメリハリをつけることができますよ」(小笠原氏)

デザイナーズホテルのような空間で過ごす社員たちを見て感じたのは、多様性と一体性が同時に満たされていることだ。それぞれが心地良く働けるように配慮されながらも、常に「動き」と「会話」が生じるように仕組まれているのだ。