実際に高速道路でも検証した。警察庁などと合同で、渋滞の名所として有名な中央道の小仏トンネル付近で、車間距離を空けて走る車を8台投入した結果、渋滞は確かに緩和されたのだ。この渋滞吸収走行は、なにもすべての車がする必要はない。10台に1台程度でも効果がある。
このセルオートマトンは「全体最適」を考えるうえでも非常に有効だ。個々人が部分最適で急ぐのではなく、ゆっくり進むことで全員が早く進めるという全体最適につながり、仕事にも活用できる。
とくにビジネスパーソンにおすすめしたいのが、スケジューリングだ。多くの人が1日の予定をすき間なく埋めている。10~11時は会議、11~12時は打ち合わせというように。しかし渋滞と同じで、スケジュールでも“車間距離”が大切だ。そうしないと1つ事故が起きると、玉突きで夕方の大事な商談に遅刻して相手を怒らせたり、悪影響が発生する。
以前、ある銀行で頭取から職員まで、1日に15~30分スケジュールの空きをつくるようにアドバイスしたことがある。すると「そんな余裕はない」と反対の声があがった。しかし、スケジュールが滞らないうえに、商談が少し長引いても対応ができて話が上手くまとまったり、仕事の効率がアップしたのだ。
そして、私がいま提唱しているのは、「科学的ゆとり」だ。科学的にゆとりを取ることで、そのマイナスが将来は全体でプラス、全体最適につながるというものだ。このことをビジネスパーソンは認識し、ぜひともビジネスの現場で実践していただきたい。
(構成=田之上 信 写真=PIXTA)