私は「渋滞」について20年以上にわたって研究してきた。もともと大学院では水や空気の流れを研究する流体力学を専門の1つにしていたのだが、この分野は歴史が古く、博士論文で新しいものは書けそうになかった。そんなあるとき、車や人も「流れ」だと気づいた。水や空気というのは、よく見るとツブツブである。分子だからだ。そこで、渋滞に数学が使えるのではないかとひらめいた。

そもそも、アイデアのきっかけになったのは、「セルオートマトン」という数学理論である。何も難しくはなく、「0」「1」の2つの数字と、それらを互いに変換させる「ルール」を使って、世の中の現象を表現しようとするものだ。1950年代に米国の数学者フォン・ノイマンが考案した。