同じ組織内では緊張感も失われがち

この研修は、ヤフーピープル・デベロップメント統括本部長の本間浩輔氏の構想から始まります。ヤフーでは、美瑛町の廃校となった小学校を研修施設として再利用する計画を進めていました。本間氏はその過程で、美瑛町が直面する様々な課題を知り、「これは研修になる」と直感したといいます。

「ビジネスをリードする人材を育成するために本当に必要な研修とは、多様な人間関係の中で課題を発見し、解決策を探り、アウトプットする、といった形のものではないかと考えていました。それはまさに『ビジネスそのもの』なのですが、同じ組織内では慣れもあり、緊張感も失われがち。それならば、異業種というダイバーシティの中でチームをつくり、社会課題解決という本気になれるテーマに取り組む研修ができないかと考えたのです」

(上)10月25日、異業種コラボ研修「地域課題解決プロジェクト」の最終プレゼンテーション発表会が行われた美瑛町の町民センター。(下)美瑛町長と約150名の町民を前に、各社の代表で混成された6チームが熱の入ったプレゼンテーションを行った。

そんな構想を抱いた本間氏が部下の池田潤氏とともに、東京大学・中原研究室に来られたのが2013年秋のこと。自分たちと一緒に、この研修をともに企画・実施し、監修・ファシリテーターを引き受けてほしいとのことで、私は、リーダーシップ開発研究の最新の知見を導入し、この研修運営のお手伝いをすることにしました。

「地域課題解決をテーマとした異業種コラボのアクションラーニング」という前例のないチャレンジでしたが、美瑛町からも快諾が得られ、縁あって声をかけた異業種4社とともにプロジェクトがスタートしました。

そのうちの1社、インテリジェンスの高橋広敏社長は、地域そして異業種コラボに可能性を感じた理由を「人材関連ビジネスを行ううえで、大都市に集中する優れた人材を地域へ送り込むことで、地域に眠るビジネスチャンスを掘り起こすことができるのではないか。また、IT、食品、物流、広告、そして人材とこれだけ異なるノウハウや実績を持つ会社が集まれば、面白いことができるはずだと考えた」と話します。また、日本郵便の執行役員、経営企画部の鶴田信夫氏は参加理由を「民営化後、地域に対してより付加価値の高いサービスを提供するためには、新しいビジネスを生み出せる人材の育成が急務。今後は地域、他社との連携によって価値を生み出す経験を若いうちから積むことが大切」と話します。