アップルCEO「ゲイを誇りに思う」発言の衝撃

アップル社のティム・クックCEOが、ゲイであることをカミングアウトしたことでも注目を集めているLGBT。LGBTとは、レズビアン(L、同性を好きになる女性)、ゲイ(G、同性を好きになる男性)、バイセクシャル(B、性別にかかわらず同性も異性も好きになる人)、トランスジェンダー(T、性同一性障害者を含む、出生時の性別と異なる性で生きることを望む人)の頭文字を並べた言葉で、性的マイノリティのことを指す。企業内でこうした人々を受け入れ、活用していくことのメリットは、「性的マイノリティに対して寛容で、働く人の人権を尊重する企業である」という対外的なアピールだけではない。実は、LGBTの人々がその実力を発揮できる職場にしていくことで、企業に大きなイノベーションを生む可能性をもたらすのだ。

東京大学東洋文化研究所教授 安冨歩氏

そのことはドラッカーの理論からも読み取ることができる。今回は、性的マイノリティであるLGBTが企業にもたらすメリットを、ドラッカーのマーケティング、イノベーション論から紐解いていく。自身も「トランスジェンダーでレズビアンの男性(≒女装しているストレートの男性)」であるという、東京大学東洋文化研究所教授の安冨歩氏に話を聞いた。

マーケティングとは「己を知っていくこと」

「ドラッカーは、マネジメントの本質を“マーケティング+イノベーション”と表現しています。しかし、ここで注意が必要なのは、マーケティングにせよイノベーションにせよ、ビジネスの現場ではドラッカーの意図とはかけ離れた意味で使われていることです」と、安冨氏。

例えば、マーケティングという言葉は一般的に「市場を調査してターゲットを定め、そこに向けて商品を訴求する」というように、顧客や市場など外に向けてなされるものとして使われている。