手足口病は急性ウイルス感染症

手足口病、ヘルパンギーナ、プール熱(咽頭結膜炎)は、3大夏風邪と呼ばれ、毎年6月から8月にかけて子どもを中心に患者が増える病気。特に、今年、2年ぶりに大流行の兆しを見せているのが手足口病だ。手足口病は、保健所当たりの報告数が5人を超えると警報が発せられるが、国立感染症研究所感染症動向調査によると、6月29日~7月5日に都道府県別の平均が5人を超えたところは25都府県に上った。6月は西日本が中心だったが、東北や関東地方でも県平均が5人を上回るところが増えており、全国的に広がりつつある。

手足口病は、名前の通り、手と足、口の中の粘膜に水疱を伴う発疹ができる急性ウイルス感染症だ。2歳以下の乳幼児が半数を占めるが、大人でもかかることがある。のどの近くに大きな水泡ができると痛くて食事や水分が摂れなくなったり、38度以下の微熱が出たりする人もいる。

原因は、コクサッキーA6、A16、エンテロウイルス71型などへの感染だ。ほとんどの人は3日~7日で自覚症状がなくなり回復する。しかし、ごくまれに、急に髄膜炎、脳炎などの合併症を起こして死亡するケースもあるのが怖いところだ。1997年にはマレーシアで、2008年~10年には中国、11年にはベトナムで死亡した例が報告されている。日本でも、1997年に大阪府、2000年には兵庫県で手足口病への感染による脳炎で子どもが死亡した。

重症になるケースがあるなら、薬が欲しいところだが、いまのところ手足口病には特効薬がない。治療は対症療法が中心だ。ほとんどの人は症状が軽いので、薬は服用せず、経過を見守るだけの場合も多い。食べ物や水分を飲み込むのが痛くて食欲が落ちる患者が多いので、少しずつでものど越しのよい食べ物や経口補水液やイオン飲料を取って、脱水症状にならないようにすることが大切だ。刺激を避けるために、辛い食べ物や熱い飲み物は避けたほうがよいだろう。

水分が摂れず尿も出ない、高熱、嘔吐、強い頭痛、視線が合わない、呼びかけに答えない、呼吸が速くて息苦しそう、ぐったりしているといった症状があったら、重症化の恐れがあるので、すぐに医療機関を受診しよう。手足口病では、治ってから3週間~11週間後に、手や足の爪の変形や爪の一部がはがれることもある。