夏かぜ「ヘルパンギーナ」が大流行
今年は夏かぜの代表格、ヘルパンギーナが猛威をふるっている。国立感染症研究所が7月29日に発表した定点報告によれば、7月14日~20日の週には10府県で国の警報基準を超えた。患者数が最も多いのは東京都、次いで山梨県、大阪府だが、ほかの道府県でも油断は禁物だ。
ヘルパンギーナは高温多湿を好むコクサッキーウイルスによる感染症で、毎年6月から8月にかけて流行する。突然、38度以上の高熱が出て、口蓋垂(のどちんこ)とその周辺に1~5ミリの水ぶくれのような水泡ができ、それが破れて潰瘍になり水をのみ込むだけでも痛む。
わが家でも長男が2歳だったときにかかったことがあるが、何よりも食べることが好きな子が「痛い、痛い」と泣き叫ぶだけで、潰瘍がある程度治るまで3日くらいほとんど食事をとらなくなった。死亡したり重症の合併症で後遺症が残ったりする恐れはほとんどない病気とはいえ、乳幼児が飲食できなくなるのは親としては心配だ。
しかも、抗ウイルス薬のあるインフルエンザとは異なり、ヘルパンギーナの特効薬はない。治療は、発熱や頭痛に解熱鎮痛薬を使うなどつらい症状を緩和する対症療法が中心だ。一般的には、薬を使わなくても2~4日程度で熱は下がり、水泡も1週間くらいで治るが、市販の経口保水液やイオン飲料を利用するなど、とにかく頻繁に水分をとって脱水症状にならないように注意したい。ただでさえ汗をかき脱水症状になりやすい季節なので、水分もとれないときは早めに医療機関へ行ったほうがよさそうだ。
このウイルス感染症は6歳以下の乳幼児に多く、大人はかからないと思っている人もいるようだが、実は大人でもかかる。大人がかかると39度以上の高熱が続くなど、重症化するケースが多いそうだ。特に、家庭内で子供が感染したとき共用のタオルを使わないようにするなど、家族がうつらないようにしよう。感染は飛沫感染で、空気中に浮遊するウイルスが鼻や喉の粘膜などに付着することによってうつる。
症状が強く出ているときが最もうつりやすいが、回復期でも2~4週間は便からウイルスが検出されることがあるという。おむつをしている乳児がかかったときは便の処理にも注意が必要だ。ヘルパンギーナのウイルスはいくつもの種類があるので、一度かかった人でも何度でもかかる。