日に日に寒さが増し、周囲の人のくしゃみや咳が気になる今日このごろ。くしゃみや咳が、風邪やインフルエンザのウイルスを拡散することはよく知られている。だが、たとえば一発のくしゃみがどのぐらいの速さで、どのくらい遠くまでウイルスの入った唾液や鼻水を飛ばすのかには諸説ある。日本ではくしゃみの速さは「新幹線並み」とよくいわれるし、アメリカではしばしば、「時速100マイル(約160キロ)で30フィート(約9メートル)先まで」しぶきが飛ぶといわれるとか。
本当のところはどうなのか。
身の回りのさまざまな「定説」を力ずくの実験で検証する、ディスカバリーチャンネルの人気番組「怪しい伝説」が、このテーマに取り組んだ。
実験を行ったのは、ハリウッドの特殊効果スペシャリスト、アダムとジェイミー。毎秒3000コマの撮影が可能な高速度カメラと、9メートルまで測れる巨大な物差しを用意し、くしゃみを誘発する手段は、鼻の穴から吸い込む粉末状の嗅ぎタバコを使うことにした。
撮影の準備が整ったところで、まずはアダムが嗅ぎタバコをひと吸い。ハクション! という音とともに飛び散るしぶきを、カメラが超スローモーション映像でくっきりととらえる。しぶきの粒子が口から30センチの距離に到達するまでのコマ数から、くしゃみの速度を割り出すと……時速はおよそ56キロ。世間の「定説」よりずいぶんと遅い。
ジェイミーを被験者にして同じ実験をしても、くしゃみの時速は約63キロと、それほど伸びない。トータルの飛距離も4~5メートルと、アメリカの「9メートル説」のほぼ半分程度だった。
とはいえ、ウイルス入りの体液が4~5メートルも飛ぶとなれば、やはり感染を広げる力はありそう。風邪気味のときにマスクをするのは、科学的にも正しいマナーのようだ。
同じ回の番組で、2人は「手」を通じた感染の拡大についても実験を行っている。紫外線を当てると光る染料を入れた「人工鼻水」を分泌する装置をつけたアダムが、友人を呼んでパーティーを開催。パーティーが終わり、事情を知らない参加者に紫外線を当てると、彼らの手や服にはピンク色に光る蛍光染料がべったりと付いていた。
アダムが鼻をぬぐうたびに彼の手についた人工鼻水が、食器やトランプ、握手などを通じて他の人に付着したらしい。外出先から帰ったら、うがいと手洗い、服の着替えは忘れずに。