650万人が糖尿病に気づいていない!

国民の5人に1人が糖尿病かその予備軍(群)となり、糖尿病はまさに国民病だ。糖尿病は、初期には自覚症状はないものの、進行すると目が見えなくなったり、腎臓が悪くなって透析を受けなければならなくなったり、手足のしびれが出たりといった合併症を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中になるリスクも高まる怖い病気だ。ところが、既に糖尿病かその予備軍である650万人もの人が、自分の病気に気づいていないという。

定期的な健康診断を受けていない人が薬局の店頭などで買い物などのついでに気軽に血液検査ができる場所として、「検体測定室(ゆびさきセルフ測定室)」が開設されているのをご存知だろうか。被検者が自分で人差し指などの先を消毒し、専用の細い針を刺して微量な血液を採取すれば、数分で血糖値や中性脂肪値などが測定できる。初めてのときは、自分で針を刺すのが少し怖いが、通常の血液検査のように注射器で血液を採取するわけではなく、1~2滴血液を取るだけなので意外と痛みは少なく簡単だ。

検体測定室は、昨年4月に臨床検査技師法の一部が改正されてできた制度。これまでも自分で採血するセルフ健康チェックサービスを実施する企業や薬局はあったが、法的根拠が不十分なグレーゾーンとされ、管轄する保健所によってはセルフ血液検査の実施が認められない場合があった。しかし、法改正による規制緩和によって、検体測定室の届け出をしている薬局や企業であれば、利用者の自己採血による簡易血液検査を行うことが可能になった。検体測定室の運営責任者となれるのは、医師、薬剤師、看護師、臨床検査技師。検査が可能な項目は、血糖値、ヘモグロビンA1c(HbA1c)、中性脂肪など、メタボリックシンドロームかどうかを調べる特定健康診査(特定健診)と同じ8項目(表)だ。

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検体(ゆびさきセルフ)測定室で検査可能な8項目

昨年、検体測定室第1号開設者となったのは、2008年から、500円で気軽に血糖値などが測れる「ワンコイン健診」を実施するセルフ健康チェックサービス事業を展開してきたケアプロだった。東京・中野と荻窪、高幡不動、神奈川県川崎市内の商業施設や駅前に4店舗の検体測定室を展開し、買い物や通勤のついでに簡易検査が受けられる。また、駅の中やスーパー、パチンコ店などでも、健康チェックイベントとして簡易検査を実施している。

「非正規雇用者や無保険の人など、健康診断を受けたくても受けられない“健診弱者”を減らしたい」

代表取締役を務める川添高志さんは看護師で、病院勤務時代に合併症に苦しむ重症の糖尿病患者の看護にあたってきた経験から、そう強調する。ケアプロでセルフ健康チェックを受けた人は今年4月末までに約29万人。長年健康診断を受けていなかった人が、500円で血糖値を測ったところ、重症の糖尿病であることが発覚し、すぐに病院を受診し入院治療したケースもあるそうだ。