がんと糖尿病の意外な関係
日本人の2人に1人ががんになり、6人に1人(2012年の推計約2050万人)が糖尿病かその予備軍と推計される。がんと糖尿病はそれぞれ「国民病」と呼ばれる身近な病気だ。一見、まったく関係がなさそうなこの2つの病気には、意外にも密接な関係があることが分かってきた。
「日本糖尿病学会と日本癌学会の合同委員会の報告では、糖尿病の人はそうでない人に比べて1.2倍がんになりやすく、特に、大腸がんになるリスクは1.4倍、肝臓がんは1.97倍、すい臓がんは1.85倍も高い」。船橋市立医療センター代謝内科部長の岩岡秀明さんは、そう指摘する。NPO法人キャンサーネットジャパンと朝日新聞の医療サイト・アピタルらが東京・秋葉原で1月21日に開催したアピタルがん夜間学校「もっと知ってほしい がんと糖尿病のこと」で講演したもの。
「合同委員会の報告は、男性約15万人、女性約18万人を10年間追跡調査した結果です。調査開始から3年以内に発症したがんは除いています。糖尿病になると、ブドウ糖を筋肉や脂肪に取り込むインスリンの働きが悪くなるため、すい臓がたくさんインスリンを出そうとします。糖尿病の人がなぜがんになりやすいのか、真のメカニズムはまだ明らかになっていませんが、インスリンは細胞を成長させ増殖させるホルモンなので、それが増え過ぎると細胞のがん化につながるのではないかと考えられています。また、高血糖自体が起こす慢性の炎症が、がんを引き起こしているとの説もあります」と岩岡さんは解説する。
糖尿病には1型と2型の2タイプあるが、がんと関連があるのはすべて2型の話。約95%は2型糖尿病で、体質、肥満、高脂肪食、運動不足、不規則な生活などによって、インスリンが不足したり、働きが悪くなったりして血糖値が上がる病気だ。加齢、男性、肥満、運動不足、不適切な食事(赤肉、加工肉の摂取過剰、野菜・果物・食物繊維の摂取不足)、過剰飲酒、喫煙は、2型糖尿病とがんに共通の危険因子であり、そうした生活習慣があることも糖尿病の人にがんが多い要因の一つとみられる。