経団連の新指針では、会社説明会が12月から3月、筆記試験や面接などによる選考は4月から8月に繰り下げる、としている。実際はどうか。就職活動の始まりとなる会社説明会のピークは例年1月だが、今年は3月にずれた。しかし、学情の調査によると、選考の入り口であるエントリーシート提出のピークは3月。会社説明会解禁と同月だ。つまり、受ける企業を吟味する期間はほとんどない。その間に企業訪問による情報収集、エントリーシートの作成を求められるため、学生は志望企業を絞らざるをえないのだ。

「早慶以上の上位大学では業界を選ばず大手企業にエントリーする学生が多かったが、今年は企業数を絞る傾向にある。一方で、大手企業が好景気で採用人数を増やしていることもあり、MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)や日東駒専(日本、東洋、駒澤、専修)の学生が大手企業に挑戦する姿も見られるようになっている」(乾氏)

影響力を高める就活生の「親」

前述の服部准教授は、大手安定志向の背景に「学生の親」の存在があると指摘する。企業を知る期間が短くなる中で、どの企業を受けるかを両親に相談し、親の時代からの大手企業を勧められ、受けていくケースが多いという。

こうした状況の中、優秀な学生を獲得するために採用活動の手法を変える企業も現れている。ソニーは今年から大学の学校推薦を12年ぶりに復活させた。神戸製鋼所は社員を出身大学に派遣するリクルーター制度を拡充し、学生との接点を増やしている。

「大手企業に人気が集中することで競争率が上がって、来年はその揺り戻しがあると見ています。各企業の採用戦略の巧拙の差が、より色濃く出るでしょう」(服部准教授)