7割の学生がブラックバイトで不当な扱いを受ける
学生アルバイトに長時間拘束労働やサービス残業などの違法行為を強いる悪質な「ブラックバイト」が話題になっている。その定義は一般的に「学生であることを尊重せず、低賃金かつ正社員並みの義務やノルマを課し、学生生活に支障を来す重労働を強いるアルバイト」とされている。
いわばブラック企業の学生版であるが、問題視した厚生労働省が今年3月末、学生アルバイトの多い学習塾業界の団体に不適切な労務管理の改善要請を求める文書を送る事態に発展している。
だが、業界の上部団体に要請しただけでどれだけの効果があるのかは疑問だ。実態は相当に根深いものがある。弁護士や学者で組織する「ブラック企業対策プロジェクト」が実施したアルバイト経験のある大学生への調査(2014年)では、未払い賃金や過度なシフト、商品の自腹購入など不当な扱いを受けた人は66.9%と約7割に及んでいる。
中でも最も深刻なのが、「辞めたいのに怖くて言い出せない」状況に追い込まれたり、「辞めたいと言っても辞めさせてくれない」と悩んでいる人が少なくないことだ。
▼「代わりの人間を2人連れてこい」
筆者は『辞めたくても、辞められない!』(廣済堂新書)という本を2014年春に上梓したが、取材の過程で正社員だけではなく、学生アルバイトにも蔓延していることを知らされた。
たとえば学習塾関連では、以下の電話相談が労働組合の相談窓口に寄せられている。
「週2日間の契約で塾講師のアルバイトを始めた。しかし、実際は勤務日以外の労働をボランティア状態で強いられ、大学に行く日までなくなってしまう始末。退職を申し入れたら『生徒一人の人生を背負っている責任感がないのか』と責められる」(大学生)
「自分の苦手な科目を担当させられているが、とうてい無理なので辞めさせてほしいとお願いしたが『この時期に先生が替わるのは許されない』と認めてくれない」(大学1年)
「学習塾を近いうちに退職したいが、就業規則では3カ月前の届け出となっており、社員に相談したら『今は辞められない』と大声で怒鳴られた」(学生)
雇用主が高圧的な姿勢で辞めることを拒んでいる。
アルバイトはパート、契約社員と同じ有期契約労働者であり、働く期間を限定しているために中途で辞めるのは一般的に難しいと言われる。
だが、そんなことはない。