ブラックでもバイトせざるをえない「事情」
こういった会社は学生バイトに限らない。
正社員でも上司や経営者が詐術、脅迫、暴言・暴力、洗脳など、ありとあらゆる違法な手段を駆使して強引に辞めさせようとしない事例が増えている。利用価値のない人間は退職に追い込むが、利用価値のある人は潰れるまでとことん働かせるという意味では、辞めさせない会社も間違いなくブラック企業だ。
妻子を抱える正社員はどんなに苛酷な労働を強いられても辞めたくても辞められない事情がある。読者の中には、たかが学生のバイトだから、嫌なら辞めればいいじゃないかと言う人もいるかもしれない。
しかし、親からの仕送りが減少し、バイトに依存しなければ生活できない学生も増えている事実はあまり知られていない。
ブラック企業対策プロジェクトの調査(学生アルバイト全国調査結果、2015年4月28日)ではアルバイトをしている学生のうち週20時間以上働いている人は29.0%もいる。しかも奨学金を利用していない学生より、利用している学生のほうが長時間働いている。
▼親からの仕送り額が減っている
全国大学生活協同組合連合会の調査(第50回学生生活実態調査、2015年2月27日)によると、学生のアルバイト就労率は69.1%と前年に続いて伸び続けている。
下宿生の平均収入は12万2170円。仕送り額は前年比マイナスの7万140円。収入額に占める仕送り額は57.4%と1975年以降、最も低くなっている。逆にアルバイトの占める比率は20.9%と75年以降最も高くなっている。
また、今後の収入面の対策として「アルバイトを増やす」と答えた学生が全体の45%もいる。中には遊ぶカネ欲しさの学生もいるかもしれないが、仕送りの減少をカバーするためにアルバイトせざるをえない苦学生が増えているのも確かだろう。
そんな弱い立場にある学生を低賃金・長時間労働で使い潰す会社が増えているのだ。
関西の専門学校に通う10代の女子学生はこんな相談を寄せている。
「朝は喫茶店、昼はカラオケ店、夜はスナックのアルバイトとして働いています。現在、精神的な苦痛でうつ病になり、薬を服用していますが、その影響で店では失敗も多くなり、辞めたいのですが、店長が辞めさせてくれません」
なにがしかの夢を持って進学しても、卒業する前に体を蝕まれる学生もいるのである。