今は“負の学歴”を気にしていません
数年後には、今度は正社員になった。板倉さんは、上司などの推薦があったからだと考えている。「入社したときは、正社員は遠い存在でしたから、うれしかったです」。
2011年には、制作に関わったCMが、ACC(全日本シーエム放送連盟)のCM FESTIVAL 中国・四国地域ラジオCM部門で、AREA FINALISTに入賞した。「使い捨て食器」を「リユース食器」に代えることで、ゴミを減らそうとするプロジェクト「リユース食器プロジェクト」を推進するCMだ。
インターネットなどの浸透により、ラジオもまた、そのあり方が問われている。板倉さんは、リスナーにより一層、近いところで番組をつくることを考えている。
人気番組「週末ナチュラリスト」では、広島のリスナーに長年愛されている覆面パーソナリティーを起用している。特に40歳前後の人たちに圧倒的な人気だという。広島県の様々な分野で活躍する人をスタジオに招き、話を聞いたり、リスナーが参加するコーナーも設けた。番組のコーナーを本にして出版もした。19歳の女性の芸人も参加するようにした。若い世代から支持される番組にもしたいのだという。
漫画やアニメの世界を科学的に検証している作家に電話をつなぎ、様々な角度から理科を学ぶ「空想科学ラジオ読本」は、特に人気があるようだ。板倉さんは抱負を語る。
「週末の息抜き番組として、日ごろ忙しく働いている人をはじめ、多くの人に楽しんでいただきたいですね」
番組の放送を終えた後、Ustream(ユーストリーム)では、司会者やゲストとのやりとりを放送する。番組の放送中は、司会の女性のフリーアナウンサーが標準語で話すが、ユーストリームでは広島の方言を使う。ローカル色を出し、リスナーを意識したつくりとなっている。フェイス・ブックなどでは、番組の裏側が見えるような演出がされている。
板倉さんは、今の職場や仕事にはとても満足しているという。
「以前は、10代の頃の負の学歴に負い目を感じていましたが、今はもう気にしていません。上手くいかないことがあったとき、それを言い訳にしなかったことがよかったのかもしれませんね。
負の学歴も、いい経験の一つとして自信に変えていこうとしてきました。退学した県立高校の先生とは今でも接点があり、卒業生として思ってくれているようです。今では、どちらの高校にも感謝しています。『週末ナチュラリスト』でも、不登校に悩むお子さんの保護者の方に向けて相談コーナーを放送しているのです。かつての経験が生きているのかもしれませんね」