ガムの概念をひっくり返す「甘いけど歯にいい」甘味料――。ロッテからデザイン依頼を受け、キシリトールガムの説明を聞いたとき、歯の健康をイメージさせる「デンタル」というコンセプトを瞬時に思いつきました。商品の中身とともに、画期的なデザインで新たなチューインガムのスタンダードを築き上げようと考えたのです。
「デンタル」という視点からパッケージの色を考えたとき、お菓子などに使う赤やオレンジなどの暖色系は「甘い」印象を与えるので真っ先に除外しました。反対の寒色系で候補を探ると、行き着いたのが誰もが知る「青」と「緑」。青は空や海をイメージさせる一方で、緑はキシリトールが植物の白樺の樹液などからとれることに直結する。ただ単なる緑だとおとなしい。こうしてたどり着いたのが、ピカピカに光らせた緑。これは表面に透明のフィルム、真ん中にアルミ箔、内側に紙という3層でできた包装紙から、真ん中のアルミ箔の光を利用したものでした。
マークを作ったのは、粒タイプやタブレットなどいろいろな種類が店頭で離ればなれに置かれても、ひと目で「キシリトール」とわかるようにするためです。デザインをするうえで手がかりにしたのは歯医者の看板。奥歯を横から見たマークが使われていることがほとんどなのですが、歯科治療においての痛さと、食べるという行為は正反対です。そこで思いついたのが、真上から奥歯を見てあげるということ。これなら、ひと目見ただけでは奥歯だとわからずに、マークとしては機能する。それに90度回転させてみても同じ形に見える。駅構内の「キヨスク」などで縦に置かれて一部分しか見えなくても、ひと目でわかるものになると考えました。