デザインした人 ジェームス・フリーマン(ブルーボトルコーヒーCEO)

日本の古き良き喫茶店文化が好きで、日本にはよく訪れ、気になる店には足を運んでいます。だからなのか、ブルーボトルコーヒーは日本の影響を受けたカフェだといわれてきました。でも僕は、喫茶店文化をリスペクトしながらも、20代の恋人同士が小声で話さなくていい、広くて開放的な空間でプロが淹れる美味しいコーヒーを提供したかった。そのためには、日本で展開する店舗にもカリフォルニアのような広い空間と大きな窓が必要だと考え、物件を見て回りました。こうして、アートの街といわれる清澄白河に1号店を出したのです。

ブルーボトルコーヒーは、世間では「サードウェーブコーヒー」と呼ばれています。「セカンドウェーブコーヒー」と呼ばれるスターバックスなどのシアトル系コーヒーチェーンに対して、豆の産地を重視して一杯一杯をスタッフの手で丁寧に淹れていくことから、新しい流れのコーヒー店だと捉えられているようです。「コーヒー界のアップル」などともいわれますが、僕自身は意識しているわけではない。ただアップルと共通するとすれば、「引き算のデザイン」を追求し、徹底してシンプルであることを目指していること。余分なものがないことで、お客さんはコーヒーを楽しむことに集中できると考えています。

カフェにはよく「注文はこちら」「ドリンクはこちら」などの案内板がありますが、僕らは設けていません。余分な装飾になってしまうし、そもそもどこで何をするか明快にわかる空間であれば、案内板なんてなくてもいいわけです。ブルーボトルコーヒーの店内は、入り口のドアを開くとすぐにカウンターがあり、手前から奥のドリンク受け取り場所まで方向づけするように、一列に並んで淹れられたコーヒーカップが目に飛び込んできます。このレイアウトは、清澄白河店がオープンする2週間前にカウンターの位置を変えたりして、ようやくできあがった形でした。