価格訴求より価値追求。ハミューレの場合、その価値が生まれる源泉をたどると、行き着くのが店頭での「声のなぐり書き」だ。店舗スタッフが書式自由の用紙に現場のことなら何を書いてもいい。本部に上げられ、社長以下全社員が閲覧する。なかでも“宝の山”とされるのが顧客の声だ。日々の困り事、既存商品への不満、「こんなのがほしい」という要望……すべて「見える化」し商品開発に活かす。

「お客様の声をもとにメーカーに開発を提案しても、メーカーはリスクをとりたがらない。ならば自分たちでつくる。それがうちのやり方です」(今さん)なぜ、メーカーがつくろうとしないものをつくるのか。店内を歩くと、「イイモノはきっと仕事を楽しくする。」のコピーが次々目に飛び込む。


右は、来店客の声を記入する「声のなぐり書き」。

「うちはイイモノを生むため、企画段階では“売れる、売れない”で判断しない。発想を狭めてしまうからです」

と話すのは武居秀幸社長だ。

「機能性、品質、デザイン、コストパフォーマンス……等々、イイモノでプロの人たちの過酷な環境を緩和し、快適に仕事をしてもらう。クールレインの開発で蒸れを減らすため、最後まであきらめなかったのも、この商品は何のために開発しているのかという軸がブレないからです。結果、価格が高くなっても買ってもらえる。一方、傘を置けば一般客に“売れる”と予想できても置かない。カッパを着る現場のプロには不要なので、傘はイイモノからは外れる。その点もブレません」

ハミューレでは、「こんな商品があったらいいのでは」という社員の発案も重視される。滑り止めのゴム部分をイチゴの形にした軍手「フルー手」、農家の女性向け用品という新分野を開拓した「Sun 3 San(サンサンサン)」ブランドで、「田植えをお洒落に」と発案されたカラフルな「ふぁーむブーツ」など、“遊び心”満載の商品も人気だ。

「どんな発案にも、否定から入らないのも、うちの特徴です」(今さん)