電車内で見かけるコロナ禍を忘れた人たち

強い寒波が日本列島を覆い、冷たい北風が吹き抜ける。冬本番のなか、季節性のインフルエンザが流行している。新たな変異株の登場で流行のスピードも速い。

にもかかわらず、電車やコンビニでマスクも付けずに何度もくしゃみをしたり、せき込んだりする。そんな光景を目にすると、思わず「マスクを付けましょう」と注意したくなる。モラルやエチケット、マナーの問題でもある。

同じ呼吸器感染症の新型コロナのパンデミック(地球規模の流行)で、マスク、手洗い、うがい……と感染対策の効果を理解したはずなのにそれができない。なぜこんな簡単な感染対策もできないのか。

インフルエンザは38度以上の高い熱を出し、のどの痛みや頭痛、筋肉痛、強い倦怠感などの症状が出る。重い肺炎を引き起こすこともある。

1シーズンに2000人を超えるお年寄りが命を落としたり、幼い子供が脳症で亡くなったりするケースもある。高齢者や幼児だけでなく、高血圧、高血糖、心臓病などの持病のある人もその持病を悪化させて死亡することがある。インフルエンザは風邪とはまったく違うことを自覚したい。

写真=iStock.com/PonyWang
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わが身を守るためにマスクを

まずはマスクの効果について話そう。ウイルス学者の河岡義裕さん(70)が興味深いマスクの実験をしている。

河岡さんは世界で初めてインフルエンザウイルスの人工合成(リバース・ジェネティクスと呼ばれる方法によってウイルスの遺伝子を組み替える)に成功し、現在は東京大学医科学研究所の特任教授や国立国際医療研究所の国際ウイルス感染症研究センター長を務め、世界的権威のあるロベルト・コッホ賞(2006年)を受賞するなど数々の医学賞を受賞している。日本を代表するウイルスの研究者である。

河岡さんとは20年ほど前に取材を通じて知り合い、その後、親しくしてもらっている。近い将来、ノーベル生理学・医学賞を受賞すると思うが、河岡さんのウイルスに対する考え方に触れると、いつもワクワクさせられる。