快適な環境で仕事をする意味を社員も実体験するため、毎日1時間、本部でも店舗でも、全員で社内清掃を行う。社長や役員はトイレ掃除。上の役職ほど人の嫌がる場所を担当する。階層による序列を感じさせない組織運営が、風通しのよい風土を生むのだろう。


取扱商品は、軍手だけでも100種類。肖像写真は、中央右が武居秀幸社長、左が開発部長の今憲行さん。

こんな例がある。店舗ではカーゴパンツも扱う。カーゴパンツは脚の左右のポケットの位置でシルエットが変わるため、顧客が裾上げで1センチの違いにもこだわるのを見て、作業服でも「見かけ」を気にすることをスタッフが察知。そこで、初めから股下の長さを3センチ刻みにし、ポケットを最適な位置につけて用意することを提案した。サイズが増えれば在庫管理が大変になるのも承知でだ。すると本部はコストがかさんでも、「胴回り10種類×股下4種類」の40枚の型紙を新たに起こして応えた。武居社長が話す。

「スタッフも自分が上げた声が必ずフィードバックされ、店舗に反映されるのでやりがいを感じ、お客様に商品の価値を伝えようとする。購入したお客様はプロノのファンになり、次はこんなのをつくってほしい、この製品のここを改良してほしいと要望し、スタッフがその声を上げると本部がまた応える。だからメーカーがつくれない商品もうちはつくれるのです」

商品開発のブレない軸を持ちつつ、「ニーズ対応→顧客への価値伝達→顧客ロイヤルティ(繰り返し利用する度合い)」の好循環を回す。そこに一般客も吸い込まれる。魅力ある商品を生む仕組みそのものに他社がマネできないハミューレの強さがある。

※記事内の商品価格はすべて消費税込み。

ハミューレ(北海道札幌市)
1975年にハミューレシューズとして創業、82年に職人用の服や仕事用品を扱う「ワークショップ光成」に。来店客の要望で、機能性の高いオリジナル商品も開発するようになる。家業を継いだ武居秀幸氏が社長に就任した2005年以降、店舗名を「プロノ」に変更。現在北海道、東北、栃木県で36店舗を展開。
(高津尋夫=撮影)
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