ミドリムシで世界を救う

青木さんは、長野県の片田舎で紳士服店を創業して、現在のAOKIを築きました。私どもはミドリムシのメーカーですが、青木さんのような世代の方と少し違うのは、自ら小売りを手がけるのが難しくなっているということです。いまは、イオンとセブン&アイ・ホールディングスという2つの巨大小売企業グループがあって、コンビニエンスストアも寡占化されています。さらに、AOKIやユニクロ、ニトリといった専門の小売チェーンも発達している。本を読んで、こういうアグレッシブな人たちが、いまの便利で豊かな日本を築き上げてきたのかと思い知らされて、本当に元気が出ます。

もうお一方、私が大好きなのは日清食品を創業した安藤百福さんです。百福さんも、「食足世平」、食足りて世は平らかなり、という持論を掲げて、敗戦後の何もない日本で、独力でチキンラーメンを開発し、カップヌードルをまさに国民食として広めました。戦争で負けたから、もうやる気が起こらないし、仕事をする気力も湧かない、という思考に陥らなかった。運命だからと、あきらめたりしなかった。先人の方に比べたら、自分の苦労など大したことではないと思えます。ここに挙げた人たちの本を読んで、救われましたし、支えられてきました。

戦争に負けても頑張り抜いた人がいた。震災に遭っても頑張っている人がいる。リーマンショックがあったからビジネスが行き詰まるわけではない。震災に遭ったから不幸になるのでは決してない。運命に支配されるのではないのです。

ミドリムシを世界中の方に届けるという約束で集まった仲間が、チームとなり、会社となりました。一緒にやってくれている仲間たちには、株式会社の社員という感覚はほとんどないと思います。私もそうです。研究者として、あるいは営業マンとして最も優秀だから私が社長をやっているというわけではありません。私は平凡な人間ですし、社長よりも優秀な研究者や優秀な営業マンが私どもユーグレナにはいます。だから私は、目的を達成するために、仲間との約束を果たすために、あしたもあさっても言い続けます。ミドリムシで世界を救う、と。

ユーグレナ社長 出雲充(いずも・みつる)
1980年、広島県生まれ。東京大学農学部卒業後、東京三菱銀行に入行も1年で退社し、2005年、ユーグレナ設立。同年12月には世界で初めてミドリムシの屋外大量培養に成功。12年、Japan Venture Awards「経済産業大臣賞」受賞、世界経済フォーラム「ヤング・グローバル・リーダーズ」に選出。
(樽谷哲也=構成 的野弘路=撮影)
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