「『ロケットボーイズ』は偏差値35の主人公がNASAのエンジニアを目指すという話。まさに諦めない力です」

私は、たくさんの本を読むというより、同じ本を繰り返し読みます。学生時代は通学電車、社会人になってからは通勤電車の中で本を読んで勉強しました。特別な勉強法を持っているわけではありません。私が自分について何か言えるとすれば、鉄道の車庫がどこにあるのか、けっこう詳しく知っているということくらいでしょうか。何のために車庫のある場所を調べるのか。ビジネスパーソンにとって、朝、いちばん重要なのは、自分の乗る通勤電車の始発駅がどこであるか知るということです。鉄道のダイヤは車庫のある場所によって決まるからなのです。

鉄道は、終点の駅が始発の駅にもなるというのは当たり前で、誰にでもわかる理屈です。もう一つ、終点ではないところで始発になる「ラッキー電車」というのがあって、たいてい、どの路線にもあります。これが、終点の駅ではなく、車庫から発車される電車です。

私は銀行員時代、千葉県の西船橋にある寮にいました。最寄りの西船橋駅は、JR総武線と東京メトロ(地下鉄)の東西線、それと東葉高速線という3つの路線が乗り入れる主要駅なので、朝の上り電車はとても混雑します。当然、満員電車ばかりなので、西船橋駅が始発となる数少ない電車に乗らなければ座席を確保することはできません。私が西船橋寮に住んでいた当時、西船橋駅からラッキー電車が出るのは午前6時45分でした。この電車に乗るためには、自分がホームに6時44分に着いていたのでは遅い。その一本前に来る電車に乗り損ねて、だいたい6時39分ごろにはほかの乗客のみなさんがたくさんホームに並んでいる。だから、6時39分よりも早い時刻にホームに着いていなければならないということです。そのようにしてホームで待っていると、西船橋駅始発の、乗客の一人もいない空っぽの電車が車庫からやって来るのです。悠々と椅子に座れます。西船橋から都心まで40分くらい座っていられました。この時間は勉強がはかどります。尊敬する神田昌典さんの本はずいぶん読みました。

最近読んだ本でお勧めできるのは、AOKIホールディングスの創業者である青木擴憲(ひろのり)さんの『何があっても、だから良かった』です。ようやく出合えた本なので、むしろお勧めしたくないくらいです。それほど素晴らしい。