義理の親や兄弟姉妹が相続に関わってくる
子どものいない夫婦から、「うちは子どもがいないので相続が簡単でいい」という話を聞くことがある。しかし、実態は逆だ。とくに持ち家がある夫婦は相続のトラブルが起きやすく、子どもがいる夫婦以上に念入りに準備しておく必要がある。
なぜ子どものいない夫婦は相続トラブルに巻き込まれやすいのか。それは義理の親や兄弟が相続に関わってくるからだ。夫に先立たれた妻のケースで考えてみよう。このとき法定相続人は、妻と両親(妻から見て義理の両親)になる。義理の親と仲が良ければ問題は起きづらいが、駆け落ち同然で結婚したり、結婚後に嫁姑問題が勃発したりしていると、相続でも揉めやすい。
義理の両親がすでに亡くなっていれば、義理の兄弟が法定相続人になる。一般的に義理の兄弟は接点が少なく、もとから感情的なしこりがある場合は少ない。しかし、それゆえ関係がドライになりがちで、遺産分割協議で融通が利きにくい面がある。
どちらにしても困るのは、相続財産が実質的に不動産しかない場合だろう。不動産を相続人同士で共有すると、いざ処分しようと思ったときに全員の合意が必要になる。たとえば妻が転勤で引っ越しを余儀なくされてマンションの処分を検討しても、義理の親が「いまは不動産価格が低いから売りたくない」といえば、処分不可能になる。
他の法定相続人に持ち分相当の代償金を支払い、不動産を1人で相続することは可能だ。ただし、その額はけっして小さくない。相続人が妻と義理の親の場合、法定相続分は妻が3分の2、親が3分の1(両親2人存命なら6分の1ずつ。1人なら3分の1)。相続財産が6000万円のマンションなら、妻が4000万円、義理の親が2000万円の持ち分になる。つまり妻は2000万円を用意しなければ、マンションを独り占めできない。同様に相続人が妻と義理の兄弟の場合、法定相続分は妻が4分の3、兄弟が計4分の1(兄弟の人数で4分の1の財産を均等に分割)で、妻が4500万円、兄弟が1500万円の持ち分に。これも簡単に用意できる額ではない。