賃貸借契約を更新すると、貸し主から更新料の支払いを求められることがある。支払う必要があるかどうかは、契約書に更新料について明記されているかによる。すなわち、契約書に更新料の定めがない場合や、「貸し主が指定する額を支払う」といった曖昧な定めしかない場合には支払う必要はないが、更新料の支払い義務やその額等が一義的かつ具体的に記載されている場合には、支払わなければならない。
ただし、定められた更新料の額があまりに高額な場合は別だ。最高裁判所は、更新料の定めは、「更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り」有効であると判断しており、額が高すぎる場合には、その定めは無効と解釈されるからだ。たとえば、半年ごとに月額賃料の5カ月分を支払うといった法外な更新料の定めは高額にすぎるため無効であり、少なくとも全額を支払う必要はないだろう。
もっとも、最高裁判所は、1年で更新される賃貸借契約について、更新料を月額賃料の2カ月分とする定めを有効と判断しているから、前述のようなよほどの例でない限りは、借り主は契約書どおりの金額の支払い義務を負うことになりそうだ。ただ、契約前の貸主との交渉によって下げてもらえることはあるので、あきらめる必要はない。きちんと契約書をチェックし、更新料が高く感じたら交渉してみよう。
更新料と並んでトラブルになりやすいのが、退去時に請求されるクリーニング代等の原状回復費だ。退去後に送られてきた明細を確認して予想以上の額が敷金から引かれていることに驚く人は少なくない。
借り主は、賃貸借契約が終了した際に物件を元の状態に戻して貸し主に返還する原状回復義務を負っている。ただし「原状回復」とは新品の状態に戻すことではない。「通常の使用によって生じる損耗」は毎月の賃料で精算されるため、借り主は故意・過失によって生じた損耗についてのみ責任を負えば足りるのだ。