マンションの貸し借りをめぐり、今までの共通認識を覆す判決が、今年7月、京都において示された。
「賃貸借の契約期間が満了し、さらに契約を更新して借り続けたい場合は、大家に更新料を支払う義務を負う」という契約内容について、京都地裁は、借り手に一方的に不利であり、消費者契約法10条(消費者の利益を一方的に害する契約は無効)に基づき、無効だと結論づけたのである。これを知って更新料の習慣がある東京や京都の読者は「更新料は、払わなくていいの?」と驚いたのではないだろうか。
そもそも「更新料」とは何なのだろうか。不動産管理などの問題に詳しい久保内統弁護士によると、更新料には、これを払うことにより、借り手は向こう2年間なら2年間、追い出されることなく住んでいられる利益を保証されるという意味合いがあるとされてきた。
また、家賃の値上げが法律上、簡単に許されない現状から、実質的な家賃不足分の埋め合わせであるという考え方などもある。
しかし、更新料を徴収する慣習を支えていたこれらの論拠が、7月の京都判決では、ことごとく否定された。加えて、8月の下旬にはさらに上の大阪高裁でも、同様の事案で更新料の無効判決が出たのだ。
「京都の件は地裁レベル。初めての判断なので影響力も大きかったが、これだけですべての流れが決まるわけではなかった。しかし、その後に示された大阪高裁の判断の影響力は大きい」(久保内弁護士)
更新料を取る大家側の旗色は悪い。それでもなお、更新料を取る理由があるとすれば、以下の2点だろう。
まず1点目は、「一連の判決が、京都という特殊な土地柄と関係している可能性がある」(同)点である。京都では、1年契約で更新料は通常家賃2カ月分と、首都圏より高い。最初に納める保証金も高額。さらに、どれだけ部屋を綺麗に使っても、契約終了時には敷金の一部しか返ってこない「敷引き」の特約まで組み合わされているケースもあるなど、大家の利益に偏りすぎた契約内容が多い。判決の事例でも、首都圏より更新料などの水準が高い。よって、首都圏の事例については、そのまま今回の判決を当てはめるわけにはいかないという考え方だ。