10~20年間、年平均7%程度で拡大し続ける
一国の経済成長の源泉は、労働力と機械設備や工場といった資本の投入、そして技術の進歩とされるが、それらの変化と密接に関わっているのが、一定期間の人口の変動を表す人口動態である。なぜなら、人口の規模や年齢構成の変化が、労働力の供給、貯蓄率や投資率、学校教育といった諸要素の動きを強く規定しているからである。経済活動を通じて一国の経済成長を促す主役は、どこまでいっても人間なのだ。
日本、韓国、台湾など東アジアの戦後経済の成長過程を見ればよくわかるが、人口増加のスピードが減速し、生産年齢人口(15~64歳)の割合が上昇している間は、労働供給が増大し、家計に余裕ができ貯蓄や子どもへの教育投資も増える。そうした環境下では、高い教育を受けた労働者が豊富に供給され、設備投資等の資金も容易に調達できる。経済成長が急速に進むゆえんである。
ところが、時とともに少子高齢化が進み、生産年齢人口は減少に転じ、高齢者の介護や医療にかかる費用が急増する社会が到来する。農村部の余剰労働が枯渇し、家計貯蓄率も大幅に落ち込む。国民経済は高度成長のエンジンを失い、安定成長を経て長期停滞に突入するのである。
過去30余年間、中国はこの生産年齢人口の比率上昇の恩恵で年平均10%の高度成長を遂げ、世界第2位の経済大国に躍進、一人当たりGDPも7000米ドル(2013年)という上位中所得国に躍進した。
だが近年、人手不足およびそれに起因する賃金上昇、労働の有効利用を妨げる諸制度が影響して、経済成長率が7%台にまで落ちている。一部の見方ではあるが、中国経済は今後も成長速度を落とし、1960年代以降に中南米や東南アジアで見られたような「中所得国の罠」に陥ってしまう危険性すらあるという。
しかし、筆者は中国を取り巻く国際環境が大きく変わらず、後述する制度改革を進めれば、向こう10~20年間、中国経済は年平均7%程度の伸び率で拡大し続けると考える。
そうなると、30年頃には、中国のGDPは13年の約3倍、日本のGDPの5倍(日本経済の成長率を年平均1%と仮定。米ドルベース)。仮にドル/円の為替レートが変わらず、ドル/人民元が今の1ドル=6元から1ドル=4元まで元高が進むなら、日本の8倍にまで膨らむ(14年には2倍)。いささか夢のようだが、以下で述べる人口動態と経済成長との関わりを見れば、中国経済にはそれだけの潜在力があると考えられる。