日本滞在30年のイタリア人経営者
「日本では、大学を卒業していないとハンディを負いますね。多くの人が大学を卒業しているから、大卒ということだけで活躍することは難しいでしょう。例えば、大学で経済学を勉強してきた学生がいます。会社に入り、その知識は本当に役に立ちますか? きっと、役には立たないでしょう」
メガネやサングラスの製造販売、スポーツ用品の輸入・販売をする株式会社アイ・シー・ジャパン(本社・千代田区)の社長のチッティ・ジャンピエロさん(55)が、流暢な日本語で語る。
1959年、イタリアのアベトーネという、人口700人ほどの小さな町に生まれた。山のふもとにあり、冬はスキーが盛んで、多くの人が観光で訪れる。子どものころから、スキーが好きだった。"難関"といわれる、「スキー教師」の国家検定試験にも受かった。27歳までは、スポーツ用品店で働いたり、インストラクターやセミナー講師などをしていた。
1985年に来日し、今年で滞在30年目を迎える。イタリアで知り合った日本人の女性との結婚生活も30年を超える。それだけに、日本の企業社会や教育などにもくわしい。
「大卒がこんなに多くなると、数十年前に中卒や高卒の人がしていた仕事を大卒の人がすることになる。例えば、掃除や運送の仕事なども……。このあたりの意識を変えることなく、大学を卒業しても、就職は上手くいかないのかもしれませんね。会社に入ってからも、社員間の競争の質が以前とは相当に違っていることを理解するべきでしょう。日本ではもう、時代が変わっているのです」
ジャンピエロさんは、イタリアの公立の専門高校を卒業した。機械工学科で、エレクトロニクスを学んだ。この高校は、5年制だった。好きだったスキーの仕事をするために、辞めることを考えたことがあるようだ。
スキーウェアなどをつくる職人をしていた父は、「まずは、高校を卒業しなさい。その後、進路を考えたらいい」と忠告した。その言葉を受け入れて、高校を卒業した。父に卒業証明書をみせると、喜んだようだ。父はその数年後、病気で他界した。