医療保険との正しい付き合い方

そうは言っても、長い人生の間には不測の事態が起こる。それが若いときに起これば、自分の力だけではカバーしきれない。お金も貯まっていない。給料もまだ低い。

「その時期は保険に頼ることになるでしょう。だけどリタイアして年金生活をしている人には失業のリスクがないし、病気やケガをしても年金で医療費が支払えるはず。現在の制度が続くとすれば、70歳以降は医療費の負担がさらに軽くなります」

つまり整理するとこうなる。医療保険はどんな目的で加入するのか。それは万が一病気やケガをして、高額な医療費を負担しなければならなくなったときに、給付金を受け取るためである。では目先はともかく、30年後、万が一の事態が起こったときに給付金が受け取れない可能性のある保険に加入する必要があるのか。保険料を終身払い続ける意味があるのか。それよりも手元の現金が少ない30代、40代の間だけ10年更新タイプの定期保障の医療保険で備え、50代以降は公的な保険制度をフルに利用しつつ、預金や年金で対応するという使い方がいいのではないか。

こうした医療保険に対する考え方は、生命保険全般に通用する。

ファイナンシャル・プランナー藤川太氏は(http://president.jp/articles/-/14368)で、40代以降の生命保険の加入しすぎについて指摘したが、生命保険の加入そのものを否定しているわけではない。むしろ「社会人になる前の子供が1人でもいたら、入っておいたほうがいいと思います」と言う。

「もちろん高額すぎる保障(保険料も高くなる)は必要ないけれど、必要な金額は確保しておくべきです。子供に対する責任は果たさなければいけない」

この場合も、終身の死亡保障ではなく、子供が独り立ちするまでの20年間でいい。それが正しい保険との付き合い方である。