20世紀最大の物理学者、アルベルト・アインシュタインの「相対性理論」には、難解なイメージがある。
特に、時間や空間など、それまで絶対的だと思われていたものが「相対的」に決まるというのがふしぎで、難しいとされる。光のスピードに近づくと、時計の進みが遅くなるなど、まるでSFのような世界が、現実世界の理論として展開される。
あるときアインシュタインは、相対性理論の意味を聞かれて、こう答えたそうである。
「熱いストーブの上に手を置くと、1分が1時間に感じられる。でも、きれいな女の子と座っていると、1時間が1分に感じられる。それが、相対性です!」
天才ならではの独特のユーモアだが、実際に時間というのは主観的に変化する。認知的に見た、時間の「相対性理論」は興味深い。
たとえば、新しいことに取り組んでいるときの時間は長く感じられる。これは、脳が、新規な刺激を前にすると、その時間を長く感じるという性質を持っているからである。
職場が変わって、慣れない仕事をしていると、1週間がまるで永久に続くように感じることがあるだろう。これは、一つの時間の「相対性理論」である。
一方、物事に熱中していると、その時間は短く感じられる。特に「フロー」と呼ばれる、仕事と自分が一体となって一種の「没我」の状態になっている状況では、はっと気付くともう数時間が経過しているということがよくある。
仕事に乗っているときには、時間の流れがまったく苦にならず、いつの間にか過ぎてしまうということはしばしばあるだろう。そのようなとき、あなたは、実は「フロー」の状態になっているのだ。
私たちが主観的に感じる時間は、脳がどのように働いているかで伸び縮みする。ぎこちなく感じる時間は長い。楽しい時間は短い。苦痛に耐えている時間は長い。このように、数多くの「相対性理論」が存在する。
アインシュタインが冗談で言ったことが、今後、脳科学、認知科学が解明すべき時間についてのふしぎな原理につながる。さすがは、天才科学者と言うべきだろう。