ところで、情報技術の発達により、私たち人間にとっての時間の「相対性」には、さらにもう一つの次元が加わるようになった。
コンピュータの性能は、日進月歩。「集積回路上のトランジスタ数は、18カ月毎に2倍になる」とも表現される「ムーアの法則」は今のところほぼ継続し、「人工知能」の発達もめざましい。
近い将来、人間の能力をはるかに凌駕する人工知能が登場すると予測されている。たとえば、人間の1年分の思考を、1秒で実行してしまうようなシステムが実現すると、私たちの「時間」に新たな「相対性」が付け加わることになるだろう。
いわゆるホワイトカラーの知的労働者が、1年かけて考えてきた問題が、人工知能を用いると、一瞬で解決できる、というような時代が到来する可能性は、十分にあるのだ。
時間はもはや固定されたものではない。経験の質や、情報技術、人工知能によって自由自在に伸び縮みする。これからは、時間の「相対性」を駆使する人が勝利するだろう。
アインシュタインがかつて冗談で言った時間の「相対性」の中に、近未来を理解するうえでの大切な鍵があるのだ。
(写真=AFLO)