クリエーティブな才能を活かすマエキタさんに対し、外資系の大手金融機関に勤める慎泰俊さんは、金融の専門知識を貧困問題の解決に役立てようとしている。出発点は経済学者ジェフリー・サックスの『貧困の終焉』に感銘を受けたこと。2年ほど前から自身のブログなどを通じて仲間を募り、07年秋、NPO法人「リビング・イン・ピース」を立ち上げた。現在、中心となるメンバーは25人ほど。その大半が、慎さん同様、金融機関やコンサルティング会社に勤める20代後半から30代前半の会社員である。
活動の柱に選んだのは、途上国の自営業者に少額の資金を無担保で貸し出して経済的な自立を促す「マイクロファイナンス」である。これなら自分たちが本業で培った専門知識を活かすことができる。
現地の視察などの準備期間を経て、カンボジアで融資を行うマイクロファイナンス金融機関と提携。つい先頃、ファンド運営などを手がけるミュージックセキュリティーズ社と組み、一口3万円から投資できる日本初のマイクロファイナンス向け投資ファンド「カンボジアONE」を立ち上げた。
マイクロファイナンスの代表格はバングラデシュのグラミン銀行だが、日本における認知度は低く、投資額も少ない。資金不足に悩む多くのマイクロファイナンス金融機関のため、これを機に日本からの投資を拡大することが狙いだ。
事務所は持たず、メンバーの活動も毎週末のミーティングが中心。平日はスカイプを活用して早朝に電話会議を行っている。メンバーの募集や日々の情報共有など、ネットを有効活用した組織運営にも、今日的な特徴がある。