現在、インターネット広告会社、オプトに勤める山口岳さんは、学生時代からひとつの理想を持っていた。「環境と広告コミュニケーションを結びつけるビジネスをやりたい!」。当時から環境NGOが主催するイベントを手伝うなど、問題意識は筋金入りだ。

<strong>オプト 山口岳</strong>●1976年生まれ。総合広告代理店を経て2006年よりオプトに移る。自然エネルギー市場専門マーケティングカンパニー「エコプト」を社内起業。
オプト 山口岳●1976年生まれ。総合広告代理店を経て2006年よりオプトに移る。自然エネルギー市場専門マーケティングカンパニー「エコプト」を社内起業。

だが世間は就職氷河期。しかも、「環境と広告」を扱う仕事など10年前に見つかるはずもなく、就職先は決まらない。とりあえず10万円の月給でNGOで働くが、子どもができたため、生活の安定を優先して、広告会社に就職する。情報システム部に身を置きながら、環境問題への関心は持ち続け、「この会社なら、やりたいことができるかもしれない」と、オプトに転職。2008年、新規事業のコンテストで優秀賞に選ばれて、道が拓けた。

「洞爺湖サミットのおかげで、皆がエコ、エコと騒ぎ始めたから、タイミングがよかった。『エコでビジネスすると儲かりますよ』と説得したんです」

2008年9月、晴れて、社内に「エコプロジェクト」を立ち上げて、太陽光発電など、自然エネルギーに関する商品を広める仕事を始めた。「エコ・プロダクトのマーケティングを考えるうちに、エネルギーの問題にいきついた。エネルギーを自給自足できる仕組みができれば、きっと社会も変わる。僕も会社もハッピーになれる仕事だと、やりがいを感じています」と熱っぽく語る。

経済危機で日本版グリーン・ニューディール政策が動き出すなど、山口さんには追い風が吹いている。事業としての将来性だけでなく、この仕事がもたらす社会的な意義は大きな魅力だ。

社会を変革するためのビジネスを行う社会起業家や社会的事業が近年、脚光を浴びている。特に山口さんと同じ20代から30代半ばの世代には、「社会に役立つ仕事がしたい」との願望が強いといわれる。