NGOや行政の広告を手がけるクリエーティブ・エージェンシー、サステナの代表マエキタミヤコさんは、仕事に社会的意義を求める傾向を「みんなが幸せになろうとしているため」だと見る。「これまでは仕事でお金を儲けて、そのお金で幸せになっていた。でも、お金のために仕事をするのは遠回りだし、迷いも生じる。仕事を通じて直接幸せになったほうがいい。『どういう社会にしたいのか』というところから出発して、そのために働いたほうがムダがないんですよ」。
2008年のリーマンショック以降、金融機関に勤める人から「サステナで働きたい」「経営に参加したい」との問い合わせも相次いでいる。「私より年上の方もいるし、年齢はさまざま。『収入が減ってもいい』と言ってくださる人が出てきたのは、すごいことだと思います」。
自分の仕事を通じて、世の中を良い方向に変える。営利企業で正社員として働きながら、社会変革のために活動する。自分と社会が“もっと幸せになる”働き方を模索する人々を追った。
大手広告代理店の社員だったマエキタさんが、NGOの表現活動を手伝うようになったのは、1997年のこと。ボランティアでパンフレットづくりなどを請け負ううちに、あちこちから依頼が舞い込むようになり、2002年、サステナを設立。本業の激務をこなしながら、「100万人のキャンドルナイト」や、ホワイトバンドで有名になった「ほっとけない世界のまずしさ」キャンペーンなど、話題のプロジェクトを手がけてきた。
サステナの仕事は、環境破壊や貧困といった深刻な社会問題を、一流クリエーターの技で、わかりやすくチャーミングに伝えること。クライアントがNGOや省庁のため予算は限られるが、その難題を知恵と人脈でなんとかクリアしてきた。他社で働きながら空いた時間にサステナを手伝う“二足わらじ”スタッフの活用もそのひとつだ。先の山口さんも、以前は広告会社で働きながらサステナにも顔を出し、ホワイトバンド・キャンペーンのウェブサイト構築などを担当した。