負け組は時間について驚くほど無知である

孫子を読み解いていく過程でわかるのは、敗者というものが時間について驚くほど無知であるということです。戦場の3つの時間帯の区別を勝者が驚くほど強く意識している一方、敗者は誰かに主導権をにぎられたあとで、泣き言のようなことを言い続けるのです。

当たり前ですが、主導権を握るものがそのあとの長い時間、成功と幸せを手に入れます。

あの仕事がしたかった、と言ってもすでに担当者は別人で決まっています。あの人が好きだった、と言ってもすでに別人と結婚しているのです。孫子の時間術は、そのまま人生の成功者の行動と直結していると言えるのです。

孫子の時間術は「時間活用」ではなく「機会活用」だと理解できたなら、私たちの日々には大きなチャンスがあることがわかります。例えば、年齢を重ねると時間が少なくなりますが、社会にある機会そのものが減るわけではありません。目を向ける対象をかえることで、人生をいつのタイミングからでも輝かせることができるからです。

ケンタッキーフライドチキンで有名な、カーネル・サンダースは60歳前後でそれまで成功してきた店を売却しています。幹線道路にあるガソリンスタンドに併設されていた彼のお店はチキンの美味しさで有名でしたが、高速道路ができたことで車の通りが完全に途絶え、借金の返済のためお店を売却したのです。しかしサンダースの手元にはほとんどお金が残りませんでした(なんという不運でしょうか!)。

普通、60歳といえば人生の総括をする時間帯です。その時間帯でほとんど無一文になってしまったら、たいていの人は嘆くことしかできないでしょう。これから老後を楽しむ資産を作るには時間が足りなさすぎるからです。

ところがサンダースは、人気の高かった自分のフライドチキンの製法を教えるフランチャイズを展開。製法を教えた店の売上から、一定の割合をもらうビジネスを開始します。なんと店を売却してから10年もたたずに、サンダースのフランチャイズ店は600店舗を超えていました。もしサンダースが「時間の活用」だけに焦点を合わせていたら、老齢期に入った自分の境遇に簡単に絶望していたでしょう。彼は孫子の時間術と同じく、機会の活用に焦点を合わせたことで、私たちの社会にその名を残すほどの成功を収め、裕福な成功者として90歳まで長生きし、大きな達成感と共にこの世を去ることになったのです。

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