【唐仁原】正直、90円値上げと聞いたときは、とうとう牛丼のデフレ時代が終わったとガックリきました。しかし、発売されるとその魅力にとりつかれました。

【金森】それでいいんですよ。問題はすき家です。吉野家、松屋と比べると、ターゲットとメニューのマッチングがまったくできていない。CMなんかを見る限りではファミリー層を狙っているようですが、果たして今のメニューで家族連れが来るかと考えると……。

【唐仁原】都心の店舗にはあまり来てないですね。メニューに対する「遊び心」はビシビシ感じますけど、子どもに遊び心でつくった食事をさせたくないでしょうからね、親は。

【金森】ターゲットに合ったメニューを出すことも大事ですが、「顧客満足度」という飲食店としての「そもそも」の部分をもう一度考え直すべきでしょう。これまですき家は、店舗数の拡大のことばかり考えてきたでしょうから。でも、日本市場が縮小傾向にあるんだから、「拡大」という方向性自体が誤りなんです。最近では、ワタミもワタミ系列とわからない、少し高級志向の居酒屋を出店して人気が出ています。どんどん出店だけすればいい時代はとっくに終わっていることに早く気づいて、消費者に視点を戻してほしいです。

【唐仁原】プレミアム牛めしが好調で、価格競争よりも品質競争が始まるかもしれません。この対談のために1カ月牛丼屋に通いつめましたが、体調は万全で、力がみなぎっています。

【金森】品質競争という意味では、ちょっと安心できますね。今後は3社でうまくすみ分けて質の高い牛丼を提供してくれることを願いましょう。

B級グルメライター
唐仁原俊博
食通の雑誌「dancyu」でも活躍するジャーナリスト。本対談のために1カ月間牛丼屋に通い続けた。最近はC級グルメ志向。
 
コンサルタント
金森 努
金森マーケティング事務所社長。徹底した顧客・生活者視点で日々企業戦略を立案。牛丼を愛する当代随一のマーケッター。
(岡本凛=撮影 時事通信フォト=写真)
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