納得できなければ社長にも断固逆らう
小島順彦の真骨頂
東京出身で、照れ屋でスマートさを好むシティーボーイ。そんな小島順彦さんの経営手法は「柔」の代表といえる。前述の3人は商いの本場・関西の出身で、「剛」そのもののリーダーシップを発揮する。対照的だ。その小島さんの第一の手法は対話。「説得力」が武器だ。
三菱商事のような総合商社と言えば、「向こう傷を恐れるな」「刑務所の塀の上に登っても、内側に落ちなければいい」と、かなりのリスクも承知で取引を獲りにいく文化だった。だが、小島さんは違う。「塀の上に登るな」どころか「塀に近づきすぎるな」と説く。
無論、コンプライアンス(法令遵守)は「剛」の3人の企業でも、厳しく律している。ただ、いまや、商社の収益は口銭を集めるだけでは、得られない。リスクを取って新しいプロジェクトや交易を開発し、そこから生まれる収穫の分配を手にする時代だ。となれば、「権力」に近づく際どいアプローチをしがちになる。
それが危ない。犯罪どころか、悪い評判が立てば、個人の「向こう傷」にとどまらず、会社自体がダメージを受ける。だから、世界中の拠点を巡って、「たとえ賄賂が当たり前の地でも、ルール違反は絶対にするな」と説いて回る。『三国志』には、「智は禍を免るるを貴ぶ」との言葉もある。問題は、起こさないことが大事。小島流が重なる教えだ。