母の教え「人の倍は働け」が
永守重信イズム「できるまでやる」を生んだ
とにかくユニークな経営者だ。永守重信さんは会社を興し、育て、企業を買収しながら「永守イズム」を広げている。原動力は、類をみない「執念力」だ。
日本電産が定める「三大精神」をみてみよう。第一に「情熱・熱意・執念」、次いで「知的ハードワーキング」、そして「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」とある。何とも激烈な経営哲学だ。
これまでに、27件のM&A(合併・買収)を重ねてきた。この秋は、鉄道用機器メーカーの東洋電機製造(東証一部)にTOBを提案し、話題を呼んだ。
大学を出て勤めた2つの会社で得た貯金と株式を軍資金に、73年7月に日本電産を設立。以来、掲げてきた「2010年に売上高1兆円の企業になる」との目標を実現させる道が、M&Aだ。
再建を頼まれ、引き取る例もある。三協精機(長野県・下諏訪町)もその一つ。同社へ行って、まずタイムカードを調べた。だめな会社ほど、社員が時間ぎりぎりに出社し、ゆっくり着替え、始業時間になってから機械のスイッチを入れる。寒い季節には、それから「ならし運転」が始まる。帰るときは逆。早めに電源を切り、またのんびり着替え、定時に消える。となると、前後で1時間は「ムダ」が出る。それが、利益を削る。だから、社員たちに「すまんが、15分早く来て、すぐスイッチを入れ、ならし運転が必要なら、その間に掃除をしてくれんか」と話す。
当たり前のことを、当たり前にやる、その日のことは、その日にやってから帰る。優良企業の共通点だ、と確信する。
当初の出勤率は90%程度だった。ということは、110人いないと100人分の仕事が続かない。それでは、人件費が10%も多く要る。競争に、勝てるはずもない。初訪問から3カ月、毎月8億円も出ていた赤字が3分の1に減る。次の3カ月後には、利益まで出た。