いわば10年選手であるMVNOが、ここにきて注目を集める理由は何か。

まず背景にあるのは、スマートフォンの普及である。従来のフィーチャーフォン(いわゆるガラケー)は、iモードなどの興隆こそあったにせよ、音声通信が主軸であり、データ通信は従属的だった。しかし、言うまでもないことだが、スマートフォンの利用にデータ通信は欠かせない。

ガラケー利用者の間でも「そろそろスマートフォンを利用したい」という機運は高まりつつある。ラインやツイッター、あるいは地図アプリのように、スマートフォンならではのアプリが社会的に普及していることが大きい。テレビを見ていても「ラインやツイッターでご意見を寄せてください」と言われると、キャッチアップへの意識が強まるのは、むしろ自然ともいえる。

一方、スマートフォンを使おうとすると、問題となるのは「通信料金」だ。MVNOが提供する「格安スマホ」を選べば、通信事業者との契約よりも月額使用料で4000円以上安くなるケースもある。年額にすれば5万円近いとなれば、家計に与えるインパクトは大きいし、愛好家にすれば新たに端末を買う余地が生じる。

日本のスマートフォン普及率は、現在ようやく半分を超えたかどうか、というところにあり、先進国の中では低い方だとされている。ガラケーからの移行が進まない理由はいくつか挙げられるが、消費者にとって事実上の値上げになることが嫌われているというのは、しばしば聞かれる話である。

スマートフォンでは「パケット定額サービス」の利用が前提になる。このため音声・データともに利用頻度が低いガラケー利用者からすれば、端末を乗り換えるだけで3000円以上の値上がりになることもあった。これに対し、MVNOを利用すれば、毎月の料金をガラケーと同水準に抑えることができる。「格安スマホ」の利用者に高齢者の割合が高いことからも、そうした生活防衛への意識がうかがえる。