携帯からテレビまで「ヤフー」になるかも
ところでMVNOは、これまで「容易ならざるビジネス」と言われてきた。なぜなら採算を合わせるために必要な契約数のハードルが高く、そのための営業費用が膨大だからだ。特に、当初の対象だったノートパソコンのデータ通信という用途は、そもそもの市場規模が小さく、営業費用の投下と帳尻が合わないことが少なくなかった。
その一方で、総務省は以前から、積極的にMVNOを支援してきた。MVNOが広く普及すれば、顧客接点がMVNOに移り、回線事業者の市場支配力が相対的に弱まるため、競争環境が改善されると考えてきたからだ。ただ、理屈としては正しいものの、そもそも市場性に課題があったため、なかなか思惑通りに進まなかった。
そうしたMVNO専業者中心の時代を「MVNO1.0」とするならば、予め顧客を大規模に持つ小売事業者などが参入している現状は「MVNO2.0」と言えるだろう。たとえば大手量販店やISPが象徴的だが、彼らはそもそも店頭やその他の顧客接点を有しており、営業費用を低く抑えることができる。また巨大な顧客基盤によるスケールメリットも期待できることから、従来よりも大きな果実を得ることができるのだ。
では「MVNO3.0」はどのような姿になるのか。いろいろなオプションは考えられるが、おそらくはMVNOをはじめとした回線やコンテンツサービスの調達を組み合わせた「クワッドプレイ」が台頭してくるのではないかと、筆者は考えている。
クワッドプレイとは、データ(インターネットアクセス)、ビデオ(テレビ、動画配信)、音声(固定、携帯電話)、ワイヤレス(モバイル通信)の4つを包括的に利用できるサービスのことだ。
現在はそれぞれのサービスが別々の事業者によって提供されることが多く、契約などの負担が大きい。サービス提供を担うのは、必ずしも回線をもつ通信事業者である必要はない。むしろ馴染みのある小売事業者や、コンテンツ配信事業者、あるいはゲーム事業者であってもいいだろう。
こうした考え方に沿って、クワッドプレイの「フロント」に立つサービスやブランドを軸に、彼らがMVNOとなることで、仮想的に統合された通信サービスが台頭する可能性がある。実際、近くモバイル回線だけでなく、光ファイバーも「卸売り」が開始される。となれば、組み合わせはより多様となるし、調達条件の交渉次第によっては、うまみのあるビジネスにもなるはずだ。